アトピー性皮膚炎


 アトピー性皮膚炎は乳幼児から成人まであらゆる年齢層で罹患しうる疾患ですが、最近は増加傾向にあると言われています。実際に診療していると、成人型アトピー性皮膚炎の増加したと思いますし、特に難治性の方が多くなったと痛感しています。患者さんにとってはなかなか思うように症状が改善されず、医療に対して不信をいだかれることもしばしばあり、結果としてドクターショッピング(医療機関を次々と変える)される方や民間療法にたよる方が多く存在することになっているようです。我々、医療従事者にとってもつらいことなのですが、少しでも改善させるために共に考えてみましょう。

<病因>
 病因は今のところ明らかではありません。ひとつの原因で説明することが困難でアトピー性皮膚炎の病因は多面的であると言われています。体質(アレルギー反応?や皮膚のバリアー機能の障害)だけでなく食生活、住環境や対人関係など現代生活そのものと密接に関係していると考えられます。したがって、治療においても日常生活をもう一度見直してみることも必要となります。

 経過中にはさまざまなことで症状が増悪したようにみえる場合があります。それには
1)皮膚炎自体が悪化した場合
2)感染症を併発した場合
3)薬の副作用(接触性皮膚炎、ステロイド皮膚症)
などがあり、その都度増悪因子や治療法を評価し直す柔軟性が必要です。

<診断>
  そう痒感があり慢性反復性の経過をとることが特徴です。皮疹は左右対称性であり、顔面、頸部、肘窩、膝窩等に強い症状が現れます。年齢や増悪、寛解の時期によって異なりますが、年とともに皮膚は粗造になり苔癬化(皮膚が分厚く、硬くなること)病変もみられるようになります。このような特徴からある程度個人でも診断は可能ですが、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、日光皮膚炎や疥癬など、他に除外すべき皮膚疾患があるため最終的には皮膚科医を受診されることをおすすめします。

<合併症>
 喘息やアレルギー性鼻炎などを高率に合併します。接触性皮膚炎もよくみられ、アトピー性皮膚炎が軽快しても手あれ等の症状が続くことがあります。また、外用剤により接触性皮膚炎をおこすこともありアトピー性皮膚炎の増悪との鑑別が必要です。
 皮膚感染症としてはカポジー水痘様発疹症(単純疱疹ウイルス感染症、写真右)が高熱等の全身症状を伴うことがあり注意を要します。細菌や真菌の感染もみられ、やはりアトピー性皮膚炎の増悪との鑑別が重要です。
 また、眼科合併症として、白内障、網膜剥離、角結膜炎、虹彩炎、円錐角膜などがあります。この内、白内障と網膜剥離は視力低下をきたすため注意を要する合併症です。わが国ではアトピー性皮膚炎患者の約10%に白内障が合併し、約8%に網膜剥離が合併するといわれており、この頻度は諸外国にくらべて高くなっています。ステロイド剤の副作用によってこのような合併症がおこると考える方もいますが、白内障の合併率はステロイドが使用される1952年以前も同じ割合で合併しており、アトピー性皮膚炎に特有の合併症と考えた方がいいようです。網膜剥離は掻破によって起こる可能性もあり、むしろステロイド剤の使用も含めてアトピー性皮膚炎を少しでもよくした方が、予防できるのではと考えています。いずれにせよ定期的に眼科を受診することが望まれます。

<治療>
 食生活や住環境等の全般的な改善をはかりながら、原因と考えられるのもがあればできるだけ排除するようにします。しかしながら原因を特定できない場合が多く対症療法が中心になります。

 一般的な食生活の注意点としては、偏食を避け、動物性脂肪、糖分、アルコールの摂取を控え、古い食物油、インスタント食品などの加工食品をできだけ摂取しないようにします。逆に魚貝類やミネラル、ビタミン類を含む食物を多く摂取するようにします。

 スキンケアも重要です。では、なぜスキンケアが重要なのでしょうか?

 最近、アトピー性皮膚炎はアレルギー反応だけでなく、皮膚のバリアー機能の障害が関与しているといわれています。これは酵素系の異常でセラミドという脂質が不足するために起こるとされています。セラミドが不足すると皮膚は乾燥し、いわゆるドライスキンの状態となり外からの刺激を受けやすくなり、皮膚炎が起こりやすくなると考えられています。また、最近ではドライスキン自体がかゆみの原因となるメカニズムも徐々に明らかになってきています。したがって、このドライスキンを改善することが重要になります。
 スキンケアの基本は清潔にすることと乾燥を防ぐことです。汗やあかやほこりはできるだけ早く洗い流すようにします。そして入浴直後、皮膚が乾燥する前に保湿作用のある外用剤を塗布します。

1)原因に対する治療

 食物やダニ、カビ、花粉等に対するアレルギーが考えられています。
 食物アレルギーで除去食療法の対象となるのはほとんどが乳幼児です。血液検査の結果だけで食物アレルギーがあると判断しないようにしてください。食物アレルギーがあると判断するには、可能性のある食物を2週間は除去し症状が軽快したかどうかを観察し、軽快した場合、再度その食物を摂取して症状が増悪したかどうかを確認します。これで増悪が確認できればその食物にアレルギーがあると考えてもいいでしょう。
 しかしこれらの食物アレルギーも高年齢になるほど軽快します。したがって通常3歳以降では除去食療法の効果は低くなり、特定の食物の制限より全般的な食生活の改善の方が重要です。全般的な食生活の改善とは先ほど述べたような偏食を避け、動物性脂肪、糖分、アルコールの摂取を控え、古い食物油、インスタント食品などの加工食品をできだけ摂取せず、逆に魚貝類やミネラル、ビタミン類を含む食物を多く摂取するようなことです。

 血液検査ではダニ対するIgE抗体は高率に陽性です。これも食物アレルギーと同様で血液検査で陽性だからといって、必ずしもダニが原因とは言えません。しかし、ダニ対策をして症状が軽快するケースもあり、検査で陽性とでれば一応、ダニ対策を奨めています。
 床はフローリングが良く、ダニ殺傷能力のある掃除機でよく掃除し、空気を入れ換えます。また、ダニ抗原は寝具にも多く、接触する時間も長いため、寝具のダニ対策が重要です。防ダニ加工のカバーやふとん乾燥機等を使用することもひとつの方法です。
 

2)対症療法

 全身的な対症療法として現在、主として行われているのは痒みやアレルギー反応を抑えるため、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服です。抗アレルギー剤の一部に他剤との併用禁忌となっている薬がありますので注意してください。

 局所的な対症療法としては、ステロイドホルモン剤および非ステロイド剤の外用があります。ステロイド外用剤には抗炎症作用の強さにより5段階のランクがあり、剤型にも軟膏、クリーム、ロション、テープがあります。また、体の部位や皮膚の状態によって吸収率が異なります。ステロイドを外用する際はこれらを使い分けなければなりません。

 最近はステロイド剤をできるだけ使用しない傾向にあります。
 比較的軽症の場合、ステロイドホルモン剤の外用でかなり症状の改善が得られます。短期間使用し軽快すれば非ステロイド系外用剤に変更します。軽快した後もスキンケアを行い再発を予防することが重要です。
 重症の場合は長期間にわたり外用を続けると副作用の出現もあるため、ステロイドホルモン剤の外用は極力行わず、最初から他の治療法を選択するようにしています。また、成人型の顔面、頸部には原則としてステロイドホルモン剤の外用はおこないません。

 最近、免疫抑制剤の外用剤が使用できるようになり、成人型の顔面、頸部の皮疹にはかなり有効です。今のところステロイド外用剤のような副作用の報告はなく、有用な外用剤と思います。

 光線過敏症がなければ光線療法が取り入れられることもあります。これは、人工紫外線照射装置を用いて長波長紫外線(UVA)、中波長紫外線(UVB)あるいはその両者を照射するもので、通常の治療に反応しない重症例にも有効なことがあります。

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